まだまだ、おこさまらんち

顔色が悪いだけの人生

「はやく結婚することはもったいない」、20代での結婚もある意味”負け犬”だった

ちょうど1年半年前に入籍をした。

5年付き合って2年同棲し、「そろそろ結婚するか」と両親の顔合わせもなく夫婦になった。

 

長い付き合いの彼との結婚、「私達なんて結婚してもなにも変わらないよ」と周囲に話していたが、内心はとても嬉しかった。とても、幸せだった。

 

彼女から「奥さん」になる。

旦那は友人との電話口で「嫁さんが」と私のことを話す。

 

病院の待合室、彼の名字で名前を呼ばれて診察室に入る。

あまり好きではない婦人科の検診だって、嫌いな虫歯の治療だってうきうきしてしまう。

 

少し遡るが、プロポーズを受けた数日後、私は幸せを噛みしめながら知人女性との会食に向かっていた。

 

指定の韓国料理に行くと先に彼女が座っている、「お久しぶりです」といいながら私も席につく。

 

少しの間談笑をして、彼女が酔っ払ってきたころに「ちょっと報告がありまして」と私は婚約の報告をした。

 

店に来るまで「きっとおめでとう!と言ってくれるんだろうな」と思っていたが、反応は真逆だった。

 

「え、なんで今なの?」

 

「まだ25でしょ、結婚する年齢じゃないでしょ。これからキャリアを積んでやっていこうって言ってるときにそんなこと普通しないでしょ」

 

「本気で仕事をしようと思っている人間の頭に『結婚』なんて浮かぶはずはない」

 

予想していた反応とのギャップに戸惑い、私は固まってしまった。


2003年に「負け犬の遠吠え」が出版された。

どんなに美人で仕事ができても、「30代以上・未婚・子ナシ」は女の負け犬

この言葉は世の女性たちに衝撃を与えたことだろう。

 

発売当時は小学生だった私だが、ドラマ化された2005年は14歳。

恋愛に興味を持ち、幸せな結婚生活を夢みるお年頃だ。

 

母は23歳で結婚し、24歳で私を産んだ。

そんな母をみて「私は負け犬にはならない」と謎の自信を持っていた。

 

JKというブランドを捨て大学に進学したころには「アラサー」という言葉が一般化する。

 

私は女子大で幼児教育を学んでいたこともあって友人たちはみな結婚願望が強かった。


「今○○大学のサークルに入って彼氏つくって結婚したら勝ち組だよね」


「やっぱ20代で結婚してはやく子ども産まないと辛いものあるよね」


なんていう会話は日常茶飯事だった。

 

母はサークルに入らない私をみて「なんのために女子大に入ったのか…出会いが無いんだからサークルで将来有望な男の子を捕まえなさいよ」なんて言っていた。

 

結婚とはなんなのか、そればかり考える学生時代だった。

 

そんなか2014年に「タラレバ娘」が発売される。


大学を卒業して社会人になり「結婚」が現実的になってきたときにつきけられた「負け犬漫画」だ。

 

女同士がつるみ、キャリアを追いかけ、不倫をしたり…

 

周りの友だちは「あんな風にはなりたくない」と合コンや婚活パーティに励みだした。

 

彼からプロポーズを受けたのは25歳の誕生日、アラサーデビューをしたときだった。

 

学生時代の友人からは「なんで一番最初にあんたが結婚するのよ」と怒られたし、「気に食わない」とド突かれることもあった。

 

友達からそう言われるたび、女として何か一つ達成した気分になった。

「あ、私これで負け犬じゃないんだ」、ふとそう感じたことを今でも覚えている。

 

そこに飛んできたのがあの知人女性の言葉だった。

 

キャリアを追いかけて結婚せずに生きていると「負け犬」だと言われ、タラとレバに叱られる。


そこを避けると「若くして結婚するともったいない」と言われる。

 

婚約から入籍までのあいだ、一体どうしたらいいのだろうと頭を抱えていた。

結婚後、少し経ったときに母から「なんでこのタイミングで結婚したのかしらね。まだまだ若いんだからできることいっぱいあったのに」と言われた。

 

まだ結婚して1年半しか経っていないが、私は好き勝手に過ごしている。

転職して、仕事を辞めて、海外に長期滞在もした。

 

何も縛られない生活だ。

 

でも、周囲からは「もったいない」や「今じゃなかった」と言われるが多い。
「結婚=可能性を捨てる」ことらしい。

 

結婚が女の幸せなのかと言えばそうじゃない、でも結婚できなかったら「負け犬」だ。


そして、結婚しても、何かの可能性を捨てた「負け犬」になるのだ。

何が正解かなんてわからない。

結婚する時期に正解も不正解もないのはわかっている。

 

どちらも「負け犬」と呼ばれるのなら、どんな負け犬になるのか、今がその勝負のときだと私は思う。