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まだまだ、おこさまらんち

顔色が悪いだけの人生

マライア・キャリーは「迷い牛」

マライア・キャリーの名曲は「恋人たちのクリスマス」でも「ヒーロー」でもない。

 

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先日、母が昔の恋人と26年ぶりに再会した。

 

飛び乗った電車に偶然その人がいたと言う。

 

私は昔からよくその人について話を聞かされていた。

 

その度母はこういう「彼の存在が私の人生の大きな基盤。だから、彼無しでは語れない」。

 

そして、母は「昔の恋人との再会が過去の清算に繋がった」と笑顔をみせてくれた。

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いくえみ綾の漫画「あなたのことはそれほど」に1人の占い師が登場する。

 

結婚に対して淡い夢を持つ主人公に対して「幸せになりたいのなら2番目に好きな男と結婚しなさい」と語る。

 

母と同様に、私にだってその人無しには自分の人生を語れないと言える存在がいた。

 

去年の10月、4年ぶりに私は彼と再会した。

 

地元の友人が集う飲み会。2人で話す時間はあったけど、まったく清算されなかった。

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彼と出会ったのは14歳のとき。

 

話しているうちに「親の離婚」、「親の再婚」、「腹違いの兄弟」など、共通するところが多い。

 

耐えられないほどの孤独感に殺されそうな思春期。

 

そんなときに一緒に過ごす関係だった。

 

夜中に電話がくれば家を抜け出し自転車で会いにいく。

 

彼は恋人が切れることなく色々な女の子と付き合っていた。

 

買い物にいったり映画を観たり、そんなデートは一度もしたことはない。

 

手を繋ぐことやセックス、楽しい時間を過ごすのは彼女の仕事だ、私じゃない。

 

でも、別によかった。

 

必要なときには私に電話をくれる。私が電話をすれば駆けつけてくれる。

 

それだけで幸せだった。

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ある日ラジオからマライア・キャリーの「Always Be My Baby」が流れてきた。

 

"You always part of me.I'm part of you indefinitely"

 

彼を取り巻く女の子たちが陽ならば、私は陰でいいと思っていたし、孤独を支える人間のほうが重宝される。

 

「お互いの孤独を埋めあって生きてる」、そんな私の気持ちを底上げしてくれたのはこの箇所だった。

 

"we were as one,babe.For a moment in time.And it seemed everlasting. that you would always be my babe"

 

マライアの歌詞だと関係性は終わっているけど、私たちは終わらない。

 

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恋愛が怖かった。

 

恋愛は必ず終わりがくるものだから。

 

「終わりがくるのは困るから、彼氏とか彼女とかそんなもんじゃなくてこのままがいいよ」

 

マライアはこう歌う"our love will never die"。

 

このままずっと一緒にいれるんだと、お守りのようにこの歌を聞いた。

 

もし私がカセットテープでこの曲を聴いていたのなら、とっくに擦り切れてもう聞けないテープが何本も机のうえにあっただろう。

 

聞けないのに捨てられない。

 

彼との関係もそうだった。

 

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今朝、電車で移動中、音楽を聴こうとSpotifyを起動させた。

 

適当なプレイリストを再生して漫画を読んでいたら聞き慣れたイントロが流れた。

 

「Always Be My Baby」だった。

 

「懐かしい。この曲を最後に聴いたのはいつだろう」と記憶を遡ると、彼の顔が頭に浮かび、思い出そうにも思い出せなかった声まで蘇ってきた。

 

思わず電車の中で「死にてぇ!」と呟いてしまった。

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10月、いつもならスルーするはずの飲み会に参加したのは、彼と再会するためだった。

 

彼とは別の人と結婚したし、すっきりした気持ちで結婚生活を過ごしたかった。

 

でも、どうして精算できなかったんだろう。

 

「Always Be My Baby」を聞きながら、走馬灯のようによぎる思い出に浸りながら、電車のなかで考えてみた。

 

始まってないものには終わりはない。

 

ただそれだけだった。

 

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マライア・キャリー化物語 にでてくる「迷い牛」のよう。

 

時間がいくら過ぎてもマライア・キャリーの歌声で”あの頃”に連れ戻されてしまう。

 

そして、あのときに勇気を出さなかった自分を責める。

 

きっと私はこのままずっとこういう気持ちでいるのだろう。 

 

でもね、旦那の顔をみれば私の迷子は解かれる。

 

「そうだ、私は彼だから勇気を出して始めることができたんだ」って。

 


Mariah Carey - Always Be My Baby