きみが考えているのは私のことじゃないんでしょ
忘れられないキスがある。時々思い出して切なくなったり苦しくなったりする。
恋愛はめんどくさい、でも、唯一無二な刺激や感動があって私は好きだ。
忘れられない人がいる。というより、忘れたくない人がいる。
恋愛って相手のことを考えて胸が苦しくなって眠れなくなったり、何をしているのか、何を考えているのか知りたくて、でも知ることはできなくて。
「好きだよ」って一言言えればいいのに、それが難しくて。歩く彼の手を取りたいのに、何か壁があるように感じてしまう。
恋愛はいつだってそうあってほしい。
「彼と同じ空間にいたい」と渇望すること、その熱量で電力を起こせたらいいのにと心から思う。
次に会う予定が立つまでの時間は長い、垂れ流しているように過ぎていく時間は「そろそろ話さないと声を忘れちゃうよ」と悲しい気持ちにする。
メールの返事が来ない、もう家に帰って布団に入っているはずでしょ…ねぇ、どうしてよ。
なんて小さく丸くなって自分のお腹を撫でる。
CRCK/LACKSの「傀儡」に「夢のキスも忘れちゃって どうしようもなく失って」というフレーズがある。
会えないのならせめて夢のなかだけでも一緒にいたい、何度そう願ったことだろう。
現実で忘れたものは夢のなかに出てこない。
声を忘れてしまえばまるで無声映画のよう。
彼が何かを言っている。でも、私には聞こえない。字幕もない。
もしかしたら「かわいいね」って言っているのかもしれない、いや、「大好きだよ」って言ってるのかもしれない。
1つ忘れてしまえば、糸が切れたパールネックレスのように全ての記憶が飛び散っていく。
失った記憶はどこへ行き、どこへ向かうのかわからないけど、もうきっと思い出すことはない。
酒井順子は「ユーミンの罪」のなかで「ユーミンの歌が抱く助手席性。(中略)私は、この頃から日本の若い女性が「○○をしている男の彼女としての私」という自意識を強く持ち始めたことを示すのではないかと思います」と語ってる。
マッチングアプリや結婚相談所とか、恋愛相手と出会う機会はいっぱいある。そして、年収や職業、住んでいるところなど選ぶ基準設定も自由自在。
大人の恋愛と経済力は切っても切り離せないものなのは重々わかってる。
でも、大人になってもこうやって純粋無垢な、昨日「好き」という気持ちに気づいた子どものように生きたい。